結論

Chrome DevToolsのPerformanceパネルで開発された「Performance Insights」機能をLighthouse本体に組み込み、従来の個別監査を整理・統合して新しいインサイト監査として提供する変更です。この後、PageSpeed InsightsやDevTools、CLIいずれの環境でも同一の診断ロジックとアドバイスが得られるようになります。

1. 背景と開発の経緯

Performance Insights panelの開発史

2022年 - 実験的パネルの登場

Chrome DevToolsに実験的な「Performance Insights panel」がChrome 102で追加されました。このパネルは、既存のPerformanceパネルが「情報量が多すぎて圧倒的」「パフォーマンスの専門知識が必要」という課題を解決するために開発されました。

2024年11月 - 実験的パネルの廃止

Chrome 131で実験的なPerformance Insights panelは正式に廃止されました。しかし、この実験で得られた最良の機能はPerformanceパネル本体に統合され、Lighthouseエンジンと組み合わせて新しいインサイト機能として提供される2025年4月 - Lighthouseへの逆移植発表。

GoogleはPerformanceパネルのサイドバーで開発されたInsights機能を、今度はLighthouse本体に戻す計画を発表しました。

PageSpeed Insightsの位置づけ

重要な背景として、PageSpeed Insights(PSI)は2018年11月からLighthouseを分析エンジンとして採用していることが挙げられます。PSIは独自の監査ロジックを持たず、Lighthouseの結果を表示するWebインターフェースの役割を果たしています。

2. 主な変更内容

監査の統合・再編成

従来の個別監査が新しいインサイト監査に統合されます。

新しいインサイト監査ID

置き換えられる監査ID

cls-culprits-insight

layout-shifts non-composited-animations unsized-images

document-latency-insight

redirects server-response-time uses-text-compression

image-delivery-insight

modern-image-formats uses-optimized-images efficient-animated-content uses-responsive-images

lcp-discovery-insight

prioritize-lcp-image lcp-lazy-loaded

render-blocking-insight

render-blocking-resources

削除される監査

時代に合わなくなった古い監査が削除されます。

削除される監査

削除理由

first-meaningful-paint

LCPに置き換えられた古い指標

no-document-write

現代のスクリプトではほとんど問題にならない

offscreen-images

ブラウザが既に適切に処理している

uses-passive-event-listeners

現在では稀な問題

uses-rel-preload

過剰推奨のリスク

third-party-facades

限定的な有用性と開発者からの懸念

トレース分析技術の共通化

Chrome DevToolsのPerformanceパネルで開発されたトレース分析ライブラリがLighthouseに統合され、すべてのツールで同じアルゴリズムによる診断結果が提供されます。

3. リリーススケジュールと移行計画

段階的な移行プロセス

2025年6月27日:Lighthouse 12.7.0で新インサイト監査がデフォルトに切り替え済み

現在(2025年7月時点):新しいインサイト監査が標準実装として稼働中

2025年10月:Lighthouse v13で完全移行、古い監査データは利用不可

ユーザーインターフェースの変更

Chrome 137では、LighthouseレポートにToggle機能が追加され、従来の監査表示と新しいインサイト監査表示を切り替えることができます。新しいインサイト監査は「Insights」セクションに、変更されない監査は「Diagnostics」セクションに表示されます。

4. ユーザーへの影響

一般ユーザー

  • レポートの項目が変わり、改善アドバイスの重複が減ってより分かりやすくなる
  • Chrome DevTools、PageSpeed Insights、CLI環境で同じ品質の分析結果を取得可能

API利用者

  • 特定の監査名や結果形式に依存したAPIユーザーには重大な影響(breaking changes)
  • 新しい監査IDへの移行作業が必要
  • 統合された監査は個別に無効化できなくなる

5. 今後の展望

この変更により、すべてのGoogleパフォーマンスツール間で一貫性のある診断ロジックとアドバイスが提供されるようになります。開発者からサイト運営者まで、同じ品質のパフォーマンス分析を複数のツールで活用できるようになり、ウェブパフォーマンス最適化の効率性が大幅に向上することが期待されています。

記事作成にあたり確認した情報源

※2025年7月時点の情報となります。
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